アメリカのサッカーには、日本や欧州の多くの国と大きく違う点があります。1部リーグ「MLS(メジャーリーグサッカー)」には、昇格も降格もありません。2部で優勝しても1部には上がれず、1部の最下位も2部に落ちません。新しいクラブは、リーグが新しい加盟クラブを認める「エクスパンション(拡張)」で加わります。
もう一つの特徴は、国境をまたぐことです。2026シーズンのMLSは30クラブで、そのうちトロント、モントリオール、バンクーバーの3クラブはカナダの街のクラブです(MLS 2025年11月20日)。
人口は341,784,857人(2025年7月1日時点の推計、米国国勢調査局「NA-EST2025-POP」2026年1月公表)。2026年6〜7月には、カナダ・メキシコとの共同開催でW杯が開かれました。
この記事では、次のことがわかります。
- 1部MLS、2部・3部のプロリーグ、アマチュアのリーグがどう並んでいるか
- 昇格・降格がない仕組みと、それを変えようとするUSLの計画
- どの街のクラブから見始めればいいか、公式の日程・結果はどこで見られるか
- 日本のリーグと何が違うか(どちらも秋に始まる日程へ移る途中です)
※リーグ制度と日程は2026シーズンのリーグ・協会の発表にもとづきます。対象は主に男子のリーグで、女子のリーグは最後に短く紹介します(2026年10月6日確認)。
アメリカと日本
アメリカは北アメリカ大陸の中央部を占め、北でカナダ、南でメキシコと接する連邦国家です。50の州と首都ワシントンD.C.からなります。2025年3月1日の大統領令で、英語が公用語と定められました(ホワイトハウス 2025年3月1日)。
日本との公式な関係は、江戸時代末の日米修好通商条約にさかのぼります。1860年(万延元年)には、この条約の批准書を交換するため、新見正興を正使とする使節がアメリカに渡りました。このとき随行したのが咸臨丸です(国立国会図書館「近代日本人の肖像」)。
アメリカのサッカーは、どう広がってきたか
1913年に協会ができ、1994年にW杯を開いた
アメリカのサッカー協会(U.S. Soccer)は、1913年に「United States Football Association」として生まれました。世界で最も早くFIFAに加盟した組織の一つです(U.S. Soccer「History」)。
国内カップの「全米オープンカップ(Lamar Hunt U.S. Open Cup)」は1914年に始まり、2026年大会は111回目です(U.S. Soccer 2025年12月4日)。MLSよりも80年以上古い大会です。
大きな転換点は、1988年7月4日にFIFAが1994年W杯の開催国をアメリカに決めたことです。1994年大会には合計350万人が来場し、1試合平均は69,174人でした。U.S. Soccerは、これが今もW杯の観客動員の記録だとしています(U.S. Soccer 2020年7月2日)。
1996年、10クラブでMLSが始まった
MLSの最初の試合は、W杯の2年後の1996年4月6日です。カリフォルニア州のスパルタン・スタジアムで、サンノゼ・クラッシュがD.C.ユナイテッドに1対0で勝ち、31,683人が見守りました。最初のシーズンに参加したのは10クラブで、そのうちLAギャラクシー、D.C.ユナイテッド、コロンバス・クルー、ニューイングランド・レボリューションなどは今もMLSで戦っています(MLS 2016年4月6日)。
その後、リーグは拡張を重ねました。2025年にサンディエゴFCが加わり、30クラブになっています(MLS 2024年10月21日)。
リーグの仕組み(男子・2026シーズン)
アメリカのプロリーグは、U.S. Soccerが「1部(Division I)」「2部(Division II)」「3部(Division III)」に区分して認めています。ただし、それぞれのリーグは別々の団体が運営していて、階層の間に昇格・降格はありません。
| 階層 | 名称 | チーム数(2026) | 昇格 | 降格 | 運営 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1部 | MLS(Major League Soccer) | 30(うちカナダ3) | (最上位) | なし | MLS |
| 2部 | USLチャンピオンシップ(USL Championship) | 25 | なし | なし | USL(United Soccer League) |
| 3部 | USLリーグ1(USL League One) | 17 | なし | なし | USL |
| 3部 | MLS NEXT Pro | 30(うちMLSクラブの2軍が27) | なし | なし | MLS |
| アマチュア | USLリーグ2(USL League Two)、NPSL(National Premier Soccer League)、UPSLなど | リーグごとに異なる | プロのリーグとの間の昇格・降格はなし | なし | 各リーグ |
出典:1部・2部・3部の区分はU.S. Soccer 2025年12月4日(全米オープンカップの出場枠を「Division I」のMLS、「Division II」、「Division III」のUSLリーグ1とMLS NEXT Proで割り振った発表)、MLSはMLS 2025年11月20日、USLチャンピオンシップはUSL 2025年12月10日、USLリーグ1はUSL 2025年12月10日、MLS NEXT ProはMLS NEXT Pro「Fifth season kicks off February 27」(チャタヌーガFC公式に掲載されたリーグ発表)
※アマチュアのリーグは全国一律の階層ではなく、地域ごとのグループで戦います。この記事では、全米オープンカップの出場経路として名前が確認できたリーグだけを載せています。
1部MLS:東西30クラブ、決めるのはプレーオフ
2026シーズンのMLSは、東と西の2つのカンファレンス(地区)に分かれています。各クラブは34試合(ホーム17・アウェー17)を戦います。同じ地区の相手とは2回ずつ(28試合)、もう一方の地区の6クラブと1回ずつ(6試合)対戦します(MLS 2025年11月20日)。
優勝はリーグ戦の順位ではなく、プレーオフ「MLSカップ・プレーオフ」で決まります。各地区の上位9クラブが進み、8位と9位はワイルドカードの1試合を戦います。1回戦は2勝した方が勝ち上がる3試合制、その後は1試合の勝ち抜きで、最後に「MLSカップ」の決勝があります(MLS「2026 MLS Cup Playoffs」)。
2部・3部:USLと、MLSの2軍が中心のリーグ
2部のUSLチャンピオンシップは、2026シーズンは25チームが東(13)と西(12)に分かれ、各30試合を戦います。各地区の上位8チームがプレーオフに進み、決勝は11月20〜22日の予定です(USL 2025年12月10日)。USLは2017年1月に、アメリカのサッカー協会から暫定の2部の認定を受けました(USL 2017年1月7日)。
3部は2つのリーグが並んでいます。USLリーグ1は17チームが1つの順位表で各32試合を戦い、上位8チームがプレーオフに進みます(USL 2025年12月10日)。
もう一つのMLS NEXT Proは、MLSのクラブの2軍(セカンドチーム)が中心のリーグです。2026シーズンは30クラブのうち27がMLSクラブの2軍で、チャタヌーガFC、カロライナ・コアFC、CTユナイテッドFCの3つが独立したクラブです。カナダのトロントFC IIとバンクーバー・ホワイトキャップスFC 2も参加しています(MLS NEXT Pro「Fifth season kicks off February 27」)。
昇格・降格は、USLから始まる計画
2026年1月27日、USLは2028年に新しい1部相当のリーグ「USLプレミア(USL Premier)」を始めると発表しました。USLプレミアとUSLチャンピオンシップはそれぞれ1つの順位表(チャンピオンシップは20クラブ、プレミアは将来20クラブが目標)、USLリーグ1は地域ごとの組み分けとし、3つのリーグを「アメリカで初めての昇格・降格の仕組み」でつなぐとしています(USL 2026年1月27日)。
ただし、この発表には、昇格・降格が始まる年や入れ替えのチーム数は書かれていません。USLプレミアがアメリカのサッカー協会から1部の認定を受けたかどうかも、2026年10月6日時点で確認できていません。また、この仕組みはUSLのリーグの中の話で、MLSとUSLの間に昇格・降格ができるわけではありません。
全米オープンカップ:アマチュアがMLSと戦える大会
リーグの間に昇格・降格がない代わりに、プロとアマチュアが同じトーナメントで戦うのが全米オープンカップです。2026年大会には、プロ48チームとアマチュア32チームの合計80チームが出場しました。アマチュアのチームは、前年秋の予選を勝ち抜いたチームのほか、USLリーグ2から9チーム、NPSLから4チームが前年の成績で出場権を得ています(U.S. Soccer 2025年12月4日)。
2026年大会はW杯と日程が重ならないよう、例年より1回戦少ない7回戦で行われます。MLSからは、メキシコのリーグとの大会「リーグス・カップ(Leagues Cup)」に出ない16クラブが、ベスト32から登場します。決勝は2026年10月21日で、優勝チームは賞金100万ドルと、2027年のCONCACAFチャンピオンズカップ(北中米カリブ海のクラブ王者を決める大会)の出場権を得ます(同上)。
カナダの3クラブは全米オープンカップではなく、カナダの国内カップ「カナディアン・チャンピオンシップ」に出場します(MLS 2025年11月13日。MLSの成績で出場権を決める大会として、全米オープンカップとカナディアン・チャンピオンシップが並べて書かれています)。
2026シーズンの日程と、2027年からの秋春制
2026シーズンのMLSは、2月21日に開幕しました。W杯のため5月25日から7月16日まで中断し、11月7日の「ディシジョン・デー」でレギュラーシーズンが終わります(MLS 2025年11月20日)。プレーオフは11月18日のワイルドカードから始まり、MLSカップの決勝は12月18日です(MLS「2026 MLS Cup Playoffs」)。
この日程は、2026シーズンで最後になります。MLSは2025年11月13日の理事会で、2027年夏から「夏に始まり春に終わる」日程に移ると決めました(MLS 2025年11月13日)。
- 2027年2〜5月:移行のための短いシーズン(レギュラーシーズン14試合、プレーオフ、MLSカップ)
- 2027-28シーズン:2027年7月中旬〜下旬に開幕し、2028年5月下旬のMLSカップで終わる
- 冬の中断:12月中旬〜2月上旬。1月にはリーグ戦を行わない
USLチャンピオンシップとUSLリーグ1の2026シーズンは3月7日〜10月24日のレギュラーシーズンで、プレーオフは10月31日〜11月2日の週末に始まります(USL 2025年12月10日の各発表)。
見始めるならこのクラブ
LAギャラクシー(ロサンゼルス)
1996年の最初のシーズンから参加しているクラブです。2024年12月7日の決勝でニューヨーク・レッドブルズを2対1で破り、6回目のMLSカップ優勝を果たしました(LAギャラクシー公式「MLS Cup」)。日本代表の経験がある吉田麻也選手が2023年夏に、山根視来選手が2024年1月に川崎フロンターレから加入しています(MLS 2024年1月6日)。
シアトル・サウンダーズ(シアトル)
2022年5月4日、メキシコのプーマスを2試合合計5対2で破り、MLSのクラブとして初めてCONCACAFチャンピオンズリーグで優勝しました。ホームのルーメン・フィールドでの決勝第2戦には68,741人が集まりました(シアトル・サウンダーズ公式 2022年5月4日)。
インテル・マイアミ(マイアミ近郊)
2025年12月6日、ホームのチェイス・スタジアムでバンクーバー・ホワイトキャップスを3対1で破り、クラブとして初めてMLSカップで優勝しました。決勝のMVPはリオネル・メッシ選手でした(MLS 2025年12月6日)。2026年4月4日には、新しい本拠地マイアミ・フリーダム・パークでの最初の試合が組まれました(MLS 2025年11月20日)。
D.C.ユナイテッド(ワシントンD.C.)
1996年の最初の試合を戦った、首都のクラブです。2025年12月31日には、ガンバ大阪から黒川圭介選手を獲得したと発表しました(MLS 2025年12月31日)。
カナダの3クラブ
トロントFC、CFモントリオール、バンクーバー・ホワイトキャップスFCは、アメリカのクラブと同じリーグ・同じプレーオフで戦います。2026年の日程でも、W杯明けの7月にモントリオール対トロントのカナダ対決が組まれています(MLS 2025年11月20日)。
アメリカ代表と2026年W杯
アメリカ代表は開催国として2026年W杯に出場しました(FIFA「Qualified teams for the FIFA World Cup 2026」2026年3月31日)。グループDを勝ち点6・8得点の1位で突破し、7月1日のラウンド32でボスニア・ヘルツェゴビナに2対0で勝ちました。W杯の決勝トーナメントでの勝利は2002年以来です(U.S. Soccer 2026年7月2日)。7月6日のラウンド16ではシアトルでベルギーに1対4で敗れ、大会を終えました(MLS 2026年7月7日)。
女子のリーグ
女子では、NWSL(National Women’s Soccer League)が2026シーズンに16チームで行われ、3月13日に開幕し、11月1日の「ディシジョン・デー」でレギュラーシーズンを終えます。各チームは30試合を戦います(The Equalizer 2026年1月15日)。2024年2月には、USLの女子リーグ「USLスーパーリーグ」も1部の認定を受けたと報じられています(The Equalizer 2024年2月9日)。女子の階層の詳細は、この記事では扱いません。
日本との比較
| 項目 | アメリカ(MLS・2026シーズン) | 日本(J1・2026-27シーズン) |
|---|---|---|
| 開催時期 | 2026年2月21日開幕・W杯で中断・12月18日MLSカップ。2027年夏から夏開幕・春閉幕の日程へ | 2026年8月7日開幕・冬に中断・2027年6月6日閉幕(Jリーグ「大会概要 J1」)※1 |
| 1部の規模 | 30クラブ(うちカナダ3)・各34試合 | 20クラブ・全38節 ※2 |
| 優勝の決め方 | レギュラーシーズン後のプレーオフ(MLSカップ) | リーグ戦の順位 ※2 |
| 1部と2部の入れ替え | なし(新しいクラブはエクスパンションで加わる) | J1の下位3が降格。J2から自動昇格2とプレーオフ優勝1 ※2 |
| プロとアマチュアのつながり | リーグ間の昇格・降格はなし。全米オープンカップでアマチュアとプロが対戦 | J1・J2・J3・JFLの下に、地域リーグ(9地域)と都道府県リーグ(47)※3 |
※1 Jリーグ「シーズン移行」
※2 Jリーグ「大会概要 J1」
※3 JFA「国内の競技会」
日本とアメリカは、ほぼ同じ時期に「秋に始まり春から初夏に終わる」日程へ移ります。日本は2026年8月、アメリカは2027年7月から新しい日程になります。冬に中断を入れる点も同じです。
違いが大きいのは、リーグ同士のつながりです。日本はJ1からアマチュアの都道府県リーグまで、成績しだいで上下に移れる1本のピラミッドです。アメリカは、MLS、USL、アマチュアのリーグがそれぞれ別の団体で運営され、その間を移る仕組みがありません。国土の広さ、クラブへの出資のしかた、カナダとの越境など、前提が大きく違うので、どちらが良いかを単純に比べることはできません。
試合の日程・結果を見るには
- MLS:日程・結果(Schedule)/順位表(Standings)
- USLチャンピオンシップ:公式サイト
- 全米オープンカップ:U.S. Soccer の大会発表(2026年大会の決勝は10月21日)
- 中継:MLSの2026シーズンのレギュラーシーズン510試合は、Apple TVで100以上の国と地域に配信されています(MLS 2025年11月20日)。日本が配信対象に含まれるかは、2026年10月6日時点で確認できていません。
よくある質問
Q. アメリカのサッカーリーグは何部まで?
A. プロは、協会が認める1部(MLS)、2部(USLチャンピオンシップ)、3部(USLリーグ1とMLS NEXT Pro)までです。その下に、USLリーグ2やNPSLなどアマチュアのリーグがあります。
Q. MLSに昇格・降格はある?
A. ありません。2部で優勝してもMLSには上がれず、MLSの最下位も降格しません。新しいクラブは、リーグが加盟を認める「エクスパンション」で加わります。
Q. アメリカで昇格・降格が始まる予定はある?
A. USLが、2028年に始める1部相当の「USLプレミア」と、2部・3部をつなぐ昇格・降格の仕組みを発表しています。MLSとの間の入れ替えではありません。開始の年や入れ替えの数は、2026年1月の発表には書かれていません。
Q. なぜカナダのクラブがMLSにいる?
A. MLSはアメリカとカナダの両方のクラブが参加するリーグで、2026シーズンはトロント、モントリオール、バンクーバーの3クラブが参加しています。国内カップは、アメリカのクラブが全米オープンカップ、カナダのクラブがカナディアン・チャンピオンシップに出ます。
Q. MLSのシーズンはいつ?
A. 2026シーズンは2月21日開幕、12月18日のMLSカップで終わります。2027年2〜5月の移行シーズンをはさみ、2027-28シーズンからは7月開幕・翌年5月閉幕になります。
Q. アメリカは2026年W杯でどこまで進んだ?
A. グループDを1位で突破し、ラウンド32でボスニア・ヘルツェゴビナに勝ちました。ラウンド16でベルギーに敗れています。
調査基準日:2026年10月6日(リーグ制度・日程は2026シーズン)

