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コンサドーレ札幌のサポーター文化マップ。ウルトラスサッポロから女神サポまで、北の応援はなぜ熱いのか

サッカークラブを支えているのは、選手とコーチだけではありません。フロントスタッフでもない。

サポーターです。

毎週スタジアムに通い、グッズを買い、SNSで発信し、遠征に行き、選手の名前を叫ぶ。彼らの熱量がクラブの売上を作り、ブランドを作り、文化を作っています。

ストライカードットコムは、これから「サポーターはチームの一員」という連載で、日本中のサッカーサポーターを取材していく予定です。その第1弾の準備として、まずは筆者の地元である北海道コンサドーレ札幌のサポーター文化を整理しておきたい。

なぜなら、コンサドーレのサポーター文化は、Jリーグの中でも独自で、かつ「地方クラブのファン経済」を考える上で必読の事例だからです。


目次

ウルトラスサッポロ:日本初のコレオグラフィ発祥地

コンサドーレ札幌のサポーターを語るとき、最初に出てくる名前が「ウルトラスサッポロ」です。

ホームゲームのゴール裏で応援をリードする中核グループで、応援歌のコール、ゲート旗の制作、ダンマク(横断幕)の制作、コレオグラフィ(人文字)の演出などを担っています。

ウルトラスサッポロの歴史で特筆すべきは、日本のJリーグで最初に「ゴール裏全体を使った人文字コレオグラフィ」を実施したのが札幌だったという事実です。

2015年のホーム開幕戦では、サポーターが主体となって人文字でクラブエンブレムをライトアップする演出を実現。これは日本のサポーター文化史における重要な瞬間として、今も語り継がれています。

つまり、コンサドーレのサポーターは、「応援される側」ではなく「応援文化を作る側」として20年以上前から日本のサッカー界をリードしてきた存在なのです。


「スポンサーを愛する」サポーター文化

コンサドーレのサポーター文化で、もうひとつ際立つ特徴があります。

「スポンサー企業の商品を積極的に買う」という消費行動です。

ゴール裏には、スポンサー企業への感謝を示す横断幕が掲げられることがあります。「◯◯さん、いつもありがとう」「△△さんの商品買ってます」というメッセージが、応援の一部として組み込まれています。

これは他クラブでも見られる現象ですが、コンサドーレでは特に顕著です。

なぜこうなったのか

筆者の取材視点では、これにはコンサドーレの経営背景が関係しています。

コンサドーレは過去に何度も経営危機を経験しています。2014年には債務超過に陥り、選手売却・スポンサー増資で乗り切った。2024年シーズンも7期連続の赤字決算を公表している(24年度売上高約50億円、純損失約2.7億円)。

つまり、コンサドーレは「経営が苦しい」ことをサポーターが知っているクラブなのです。だからサポーターは「自分たちが買い支えなければクラブが消える」という意識を持っています。

スポンサー企業の商品を買うことは、間接的にクラブを支えることになります。この経済循環が、サポーター文化として組み込まれています。

これは欧州ビッグクラブとは全く違う、「弱者の経済」としてのサポーター文化です。


関東連合:日本最大の遠征サポーターネットワーク

コンサドーレのサポーター文化のもうひとつの特徴が、「関東連合」と呼ばれる、関東在住の札幌サポーターのネットワークです。

北海道は地理的に本州から離れているため、Jリーグの試合の多くはアウェイ。サポーターが札幌から飛行機で全国を遠征するのは負担が大きい。

そこで、関東に住んでいる札幌出身者・札幌ファンが、関東圏のアウェイ試合で応援団を組織する文化が生まれた。それが「関東連合」です。

関東連合は、首都圏の試合で札幌のゴール裏応援をほぼ単独で支えています。札幌から飛んでくるサポーターも合流し、アウェイなのに「ホームのような応援」が成立します。

これは日本のサッカー界でも特殊な現象で、「地理的不利を地域分散ネットワークで補う」モデルの先駆けとも言える。


女神サポという独自カテゴリ

近年、コンサドーレのサポーター文化で注目されているのが「女神サポ」です。

これは女性サポーターのグループの愛称で、ゴール裏で応援するスタイルを貫いています。一般的にはゴール裏は「男性中心の応援集団」というイメージがあるが、コンサドーレでは女性が積極的にコール・コレオに参加する文化が育っています。

女神サポの存在は、コンサドーレのサポーター層の多様性を象徴しています。「ゴール裏は男のもの」という固定観念を破ったことで、家族連れ・カップル・友人グループなどがゴール裏に参入する流れも生まれています。


サポーター主導の経済活動

コンサドーレのサポーター文化を観察すると、サポーターが経済活動の主体として機能していることがわかる。

グッズ自作・販売

ウルトラスサッポロは、Tシャツ・ステッカー・タオルなどを独自に制作・販売してきた。クラブ公式グッズだけでなく、サポーター団体が作った非公式グッズが流通しています。

これは欧州サッカー文化に近い。バルセロナのペーニャ(地域サポータークラブ)や、ドルトムントのウルトラスが独自グッズを作って販売するのと同じ構造です。

サポーター向けメディア

「コンサドーレファン」「コンサデコンサ」「毎日コンサ」など、サポーターが運営するメディア・ブログが多数存在します。試合レポート、選手分析、文化論まで、クラブ公式メディアでは出せない深さの情報が日々発信されています。

これらのメディアは、コンサドーレファンの情報インフラとして機能しています。新規ファンがクラブに入る入り口にもなっています。

地域経済への接続

コンサドーレのサポーターは、試合観戦と地元経済を強く結びつけています。ホームゲーム前後の飲食・宿泊・移動が札幌経済に直接還元されます。

2023年シーズンのコンサドーレの経済波及効果は約211億円(北海道内136.97億円、税収効果6.6億円)と試算されています。この数字の背景には、サポーターの消費行動がある(詳細は「コンサドーレ札幌の経済波及効果」参照)。


サポーターと「クラブの売上アイデア」

ここからが本題です。

サポーター文化を観察することで、日本のサッカークラブがどう売上を上げるかのヒントが見えてくる。

ヒント1:弱者の経済を強みに変える

コンサドーレのサポーターは「クラブが苦しい」ことを知っているから、積極的にスポンサー企業の商品を買い、グッズを買い、遠征に行く。

クラブ経営の透明性を上げ、「あなたが買ってくれることが直接クラブを救う」というメッセージを伝えることで、消費行動を引き出せる。

これは地方の中小事業者・小規模ECサイトが学べる構造です。「うちは小さい店です。あなたの一回の購入が大きな意味を持ちます」と素直に伝える。これが顧客との関係を深める。

ヒント2:サポーターを「メディア」として扱う

コンサドーレファンメディアが大量に存在することは、クラブにとって財産です。これを活用しない手はない。

サポーターメディアと公式が連携し、選手情報・試合分析・文化論を共同で発信すれば、コンテンツの厚みが一気に増す。クラブ公式アカウントだけで発信するより、サポーター発信を巻き込む方が遥かにリーチが広がる。

これは中小企業のSNS運用にも転用できます。顧客のSNS発信を巻き込み、公式が拡散する構造を作ると、広告費ゼロでリーチが伸びる。

ヒント3:「遠征」を経済活動として設計します

関東連合のような地理的不利を埋めるネットワークは、クラブが組織化できます。

「遠征パッケージ」を公式に作り、関東連合と連携してチケット・宿泊・移動を一括手配します。これは旅行業との連携になり、新しい収入源になります。

地方クラブにとって、「離れた場所のファン」を経済活動に巻き込む仕組みは大きな可能性を持つ。

ヒント4:女性・家族層への入り口を増やす

女神サポの存在は、コンサドーレが「男性ファン以外」にも開かれていることを示す。

家族連れ・カップル・女性グループにとって観戦体験のハードルを下げる工夫が、これからのJクラブの経済成長の鍵になります。スタジアム内のトイレ・授乳室・ファミリーシート・女性向けグッズなど、ハード面の投資が直接売上につながる領域です。


ストライカードットコム視点:サポーター取材の意義

筆者がストライカードットコムで「サポーターはチームの一員」という連載を始めるのは、こうした視点を一次情報として残したいからです。

クラブ公式が発信する情報は「クラブ視点」で整理されています。サポーター視点は、クラブ公式では拾われない。

「私はなぜこのクラブを応援するのか」「年間いくら使うのか」「クラブに何を求めるのか」「もし自分が経営者ならどう変えるのか」

これらをサポーター本人の言葉で記録することは、Jリーグ経済の理解を深めるための一次資料になります。同時に、サポーター本人にとっても、自分の応援活動を振り返り、言語化するきっかけになります。

コンサドーレのサポーターを第1弾として、これから日本中のクラブのサポーターを取材していきたい。


まとめ

  • ウルトラスサッポロ:日本初のコレオグラフィ発祥地
  • 「スポンサーを愛する」文化:弱者の経済としてのサポーター意識
  • 関東連合:地理的不利を補う遠征ネットワーク
  • 女神サポ:ゴール裏の多様性を象徴
  • サポーター主導の経済活動:独自グッズ、ファンメディア、地域経済接続
  • クラブの売上ヒント:弱者の経済/サポーターメディア/遠征設計/女性家族層

サポーター文化を観察することは、サッカーを観るだけでは見えない構造を学ぶことです。次回以降、コンサドーレサポーター個人への取材を通じて、さらに深い視点を提供していきたい。


参考リンク
コンサドーレ札幌サポーターの特徴(CONSADOLE FAN)
ウルトラスサッポロ:CSレキシコン(コンサデコンサ)
札幌の応援について知っておいてほしい7つのこと(note)
なぜゴール裏で?コンサドーレ札幌・女神サポの「応援スタイル」(エキサイト)
サポーターブログ「毎日コンサ」

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この記事を書いた人

ストライカードットコム編集部