サッカーの試合を見ているとき、ピッチ上にいる11人の選手と監督・コーチ陣以外に、いったい何人の人がそのクラブを支えているのか、考えたことはあるだろうか。
実は、Jリーグの中堅クラブでもフロントスタッフだけで50名前後、選手・コーチ・育成スタッフを合わせると総勢100〜200名規模の組織になっています。マンチェスター・ユナイテッドのような世界的ビッグクラブでは、1,000名を超えることもあります。
このコラムでは、プロサッカークラブの中で「どんな職種の人が、何人くらい働いているのか」を整理します。サッカークラブが、いかに多様な専門職の集合体であるかを知ってほしい。
サッカークラブの組織構造
プロサッカークラブの組織は、大きく3つの層に分かれる。
1. フロント層(経営・運営スタッフ)
クラブの経営・営業・広報・運営を担う、いわゆる「会社員」的なスタッフ。J1で約50名規模。
2. プロ層(選手・コーチ)
トップチームの選手と、彼らを直接指導するコーチング・スタッフ。約40〜60名。
3. アカデミー層(育成・スクール)
下部組織の指導者・スタッフ・スクールコーチ。クラブによっては50名以上になります。
合計で、J1中堅クラブの総スタッフ数は150〜200名規模が一般的。J2・J3はこれより小さく、欧州ビッグクラブはこれより遥かに大きい。
フロント層の職種(J1で約50名)
クラブの経営を支える「会社員」的なスタッフ。主な部署と職種を見ていく。
経営企画・経理・人事(5〜10名)
クラブの経営戦略、予算管理、財務、人事制度を担当。
- 経営企画担当
- 財務・経理担当
- 人事・労務担当
- IT・情報システム担当
クラブが上場企業の子会社の場合、親会社からの出向者が多い部署でもあります。
営業(10〜15名)
スポンサー獲得・継続を担う、最も人数の多い部署のひとつ。
- スポンサー営業
- 法人営業(団体チケット販売)
- ホスピタリティ営業(VIP席販売)
- 物販営業(グッズ卸先開拓)
スポンサー営業はクラブ収入の44%を担う部署で、営業力がそのままクラブ経営の安定性に直結する(サッカークラブのスポンサーって何?)。
マーケティング・広報(5〜10名)
クラブのブランド構築・情報発信を担当。
- 広報担当(プレスリリース、メディア対応)
- SNS運用担当
- デジタルマーケティング担当
- ブランド戦略担当
- 写真・動画制作担当
近年はSNS担当・動画クリエイターの比重が大幅に増えています。InstagramやTikTok、YouTubeのコンテンツ制作で1〜2名専属を置くクラブも珍しくない。
試合運営(5〜10名)
ホームゲームの当日運営を統括する部署。クラブの中で「最も重要」と言われる部署のひとつ。
- 試合運営責任者
- スタジアム運営担当
- セキュリティ・警備調整
- ボランティア管理
- アウェイサポーター対応
川崎フロンターレのボランティア400名を取りまとめるのも、この部署の仕事。
物販・MD(5〜10名)
グッズ企画・販売・ECを担当。
- 物販企画担当(新商品企画)
- バイヤー(仕入れ・選定)
- EC運営担当
- 店舗運営担当
- 物流・在庫管理担当
Jリーグ物販ランキング1位の浦和(15.94億円)レベルになると、物販部だけで20名以上のクラブもあります。
ファンクラブ・チケット(3〜5名)
シーズンチケット販売、ファンクラブ会員管理を担当。
- ファンクラブ運営担当
- チケット販売担当
- カスタマーサポート担当
地域・社会貢献(2〜5名)
ホームタウン活動・社会貢献活動を担当。
- ホームタウン担当
- 社会貢献活動担当
- 教育機関連携担当
川崎フロンターレの算数ドリルのような事業も、この部署が企画・実行します。
プロ層の職種(J1で約40〜60名)
トップチームの試合・練習を直接支えるスタッフ。
監督・コーチング(5〜8名)
- 監督
- ヘッドコーチ
- アシスタントコーチ
- ゴールキーパーコーチ
- セットプレーコーチ(近年増加)
- 戦術アナリスト
選手(25〜35名)
トップチームの登録選手。J1の場合、登録枠は最大35名前後(ユース昇格選手・特別指定選手含む)。
メディカル・フィジカル(8〜15名)
選手の身体を支える専門職集団。
- チームドクター(医師)
- 理学療法士(PT)
- アスレティックトレーナー(AT)
- フィジカルコーチ(S&C)
- 栄養士・食事担当
- マッサー(マッサージ担当)
近年はスポーツ科学の発展により、この部署の専門化が進んでいる。1クラブで10名以上のメディカル・フィジカルスタッフを抱えるのが普通になった。
編成・スカウティング(3〜5名)
選手獲得・契約交渉を担当。
- スポーティング・ディレクター(編成責任者)
- スカウト
- 契約担当
- ビデオアナリスト
ブライトンのような分析重視のクラブでは、スカウティング・分析チームだけで20名以上抱えることもある(ブライトンの記事参照)。
チーム運営(2〜3名)
トップチームの日常運営を担当。
- チームマネージャー
- 通訳(外国人選手・監督対応)
- 装備品担当(キットマン)
- 移動・宿泊手配担当
アカデミー層の職種(クラブによって大きく差)
下部組織(U-18ユース、U-15ジュニアユース、U-12ジュニア、スクール)を運営するスタッフ。
アカデミー指導者(10〜30名)
- アカデミーダイレクター(責任者)
- 各カテゴリの監督・コーチ(U-18、U-15、U-12等)
- ゴールキーパー専門コーチ
- フィジカルコーチ
スクール運営(10〜30名)
幼児・小学生向けの普及スクールを運営。
- スクール本部担当
- 各拠点のスクールマスター
- 巡回コーチ
- 営業・事務スタッフ
川崎フロンターレは市内6ヶ所で1,600名を指導しているが、これを支えるスクールスタッフは数十名規模になります。
アカデミー支援(5〜10名)
- 寮監(地方出身選手の生活支援)
- 学業支援担当
- 保護者対応担当
欧州ビッグクラブとの比較
参考として、欧州主要クラブのスタッフ規模を見てみる。
| クラブ | 総従業員数(推定) |
|---|---|
| マンチェスター・ユナイテッド | 約1,000名 |
| バルセロナ | 約500名 |
| バイエルン・ミュンヘン | 約400名 |
| ブライトン | 約300名 |
| J1中堅クラブ | 約150〜200名 |
差を生んでいるのは主に4つの領域です。
- スカウティング・分析チーム(欧州ビッグは50〜100名、Jは数名)
- メディア・コンテンツ制作(欧州ビッグは独自のテレビ局運営)
- 国際事業(海外スクール・グッズEC・ツアー運営)
- スタジアム運営(自前所有のため、施設運営チームが大規模)
サッカークラブで働く人材像
ストライカードットコムが取材を続ける中で見えてきたのは、サッカークラブの仕事は「サッカー好き」だけでは続かないということです。
求められるのは、ビジネススキル + サッカーへの情熱の両方。
営業職
- 一般企業の営業経験
- スポーツビジネスへの興味
- 地元企業との関係構築力
- スポンサー価値の数値化能力
マーケティング・広報職
- SNS・動画制作スキル
- データ分析(GA4、SNS分析)
- ブランディング設計
- 企画提案力
試合運営職
- イベント運営の実務経験
- 危機管理スキル
- ボランティア組織運営
- ホスピタリティ感覚
スカウティング・編成職
- サッカーの専門知識
- データ分析スキル
- 海外言語(英語必須、スペイン語・ポルトガル語あるとなお良い)
- 契約交渉力
アカデミー指導者
- サッカー指導ライセンス(JFA C級〜S級)
- 子どもへの教育スキル
- 保護者対応能力
- 育成の長期視点
近年は「サッカーが好きだから」だけでは入れない時代になっています。各職種で求められるビジネススキルが明確になり、専門性が高まっています。
Jクラブで働きたい人へ
サッカービジネスを取材する立場から、Jクラブで働きたい人にいくつかのアドバイスを。
① 「好き」だけでは入れない
各職種で求められるビジネススキルが明確になっています。営業なら営業経験、マーケなら実績、メディカルなら資格。サッカーへの情熱は前提条件で、それ以上のスキルが必要。
② 中途採用が多い
新卒採用枠は限定的。多くのスタッフは他業界での経験を持って中途入社しています。一度別業界で経験を積んでから挑戦するのが現実的。
③ 給与水準は決して高くない
J1の中堅クラブのフロントスタッフでも、年収は一般企業と同等か、やや低い水準。「サッカークラブで働く」というやりがい・報酬の代わりに、待遇面では妥協が必要なケースもあります。
④ J1クラブだけが選択肢ではありません
J2・J3クラブ、なでしこリーグ、JFLクラブ、地域リーグクラブ、サッカー協会、スポーツマーケティング会社など、サッカービジネスに関わる場所は広い。
⑤ 求人情報サイト
- ジョブサカ(jobsoccer.club)
- スポタビ(spotabi.com)
- 各クラブ公式の採用ページ
これらを継続的にチェックする習慣を持つと、適切なタイミングでチャンスを掴める。
まとめ
- サッカークラブは3層構造(フロント・プロ・アカデミー)
- J1中堅クラブで総勢150〜200名規模
- フロントスタッフは約50名、営業・マーケ・運営・物販などに分かれる
- プロ層のメディカル・フィジカルが近年急増
- 欧州ビッグクラブは1,000名規模で、特にスカウティング・国際事業で差
- 「サッカー好き」だけでは入れない、ビジネススキルが必須
サッカークラブは、選手とコーチだけでなく、本当にたくさんの「サッカーを支える人」によって動いています。次にスタジアムに行ったとき、ピッチ上の選手だけでなく、その背後にいる100名以上のスタッフのことを少しだけ意識してみてほしい。
その全員が、その1試合のために働いています。
参考リンク
– Jクラブで働く卒業生&元Jクラブスタッフの先生にお給料や待遇を聞いてみた(JAPANサッカーカレッジ)
– サッカーのフロントとは?クラブでの役割や仕事内容(spojoba)
– Jリーグクラブの仕事内容一覧(Foot Ball Business)
– Jリーグクラブに就職する方法(ATHLETE LIVE)
– Jリーグチームの社員数について(Tassiy’s Blog2)
– Jリーグクラブで働くためのロードマップ(スポタビ)
– Jリーグクラブ求人・転職情報まとめ(ジョブサカ)
