ウェールズのサッカーには、リーグが2つの方向に分かれているという特徴があります。
1つは、ウェールズサッカー協会(FAW)が運営する国内のリーグです。1部「カムリ・プレミア(Cymru Premier)」は、2026-27シーズンから12クラブを16クラブに増やし、30節のあと上位・中位・下位の3グループに分かれて戦う方式に変わりました(FAW 2024年9月27日)。
もう1つは、イングランドのリーグです。首都カーディフのカーディフ・シティ、スウォンジー・シティ、北部のレクサムは、2026-27シーズンはそろってイングランド2部のチャンピオンシップでプレーしています(スウォンジー・シティ公式 2026年6月25日)。
この記事では、次のことがわかります。
- ウェールズが「国」としてどんな単位で、なぜFIFAに独自の協会を持っているか
- 国内リーグは何部まであり、昇格と降格はどう決まるか
- イングランドのリーグでプレーするクラブと、国境をまたぐ王者TNS
- 日本のリーグと何が違うか、公式の日程・結果や中継はどこで見られるか
※リーグ制度は2026-27シーズンの協会の規程・発表にもとづきます。対象は男子のシニアのリーグで、女子は概要だけを扱います(2026年10月7日確認)。
ウェールズという国と、日本とのつながり
英国を構成する「国」の一つ
ウェールズは、グレートブリテン島の西側にある地域で、イングランド、スコットランド、北アイルランドとともに英国(連合王国)を構成しています。主権国家は英国ですが、サッカーでは英国の4つの地域がそれぞれ別の協会を持ち、FIFAに別々に加盟しています。ワールドカップやEUROの予選にも、ウェールズ代表として出場します。
人口は約318万7,000人です(2024年6月30日時点、ウェールズ政府 2025年7月30日)。
言葉は英語とウェールズ語です。ウェールズ語は法律で公用の地位を持っています(Welsh Language (Wales) Measure 2011 第1条)。2021年の国勢調査では、3歳以上でウェールズ語を話せる人は538,300人、人口の17.8%でした(ウェールズ政府 2022年12月6日)。協会やリーグの名前にも、ウェールズ語の「Cymru(カムリ=ウェールズ)」が使われています。
日本との関係
ウェールズ政府によると、ウェールズには日本企業が70社あり、日本からの投資は1970年代に始まりました。ウェールズ政府は2025年を「Wales and Japan 2025」として、経済・文化・スポーツなどの交流を進める年にしています(ウェールズ政府 2025年1月8日)。
スポーツでは、2019年のラグビーワールドカップでウェールズ代表が北九州市でキャンプをしたことが、今も交流のきっかけとして紹介されています(ウェールズ政府 2025年5月14日)。
世界で3番目に古い協会
1876年、レクサムで生まれた協会
ウェールズサッカー協会(FAW)は、1876年2月2日に北部の街レクサムのホテル「Wynnstay Arms」で生まれました。イングランド、スコットランドに次いで、世界で3番目に古い代表協会です。最初の国際試合は同じ年の3月25日、グラスゴーでのスコットランド戦で、0対4で敗れています(UEFA 2026年2月)。2026年は創設150年の年です。
国内カップ「ウェールズ・カップ」は1877/78シーズンに始まり、最初の優勝はレクサムでした。リーグは1902年にウェールズ・リーグが始まり、全国の1部リーグ(現在のカムリ・プレミア)は1992年にできました(FAW「Celebrating 150 Years」)。
FAWは、サッカーのルール(競技規則)を決める国際サッカー評議会(IFAB)の常任メンバーでもあります。1886年から、ルールづくりに直接関わってきました(同上)。英国の4つの協会がFIFAとは別にこの立場を持っていることが、ウェールズが独自の協会としてFIFAに加盟している背景の一つです。
現役で世界最古の国際試合会場
レクサムのレースコース・グラウンド(Racecourse Ground)では、1877年3月5日にウェールズ対スコットランドの国際試合が行われました。ギネス世界記録は、ここを「今も使われている最も古い国際試合の会場」と認定しています。2024年4月5日には、女子代表のEURO2025予選がここで行われました(ギネス世界記録)。
代表の主な成績
男子代表は、1958年のワールドカップで準々決勝まで進み、EURO2016では準決勝に進みました。2022年にはワールドカップに出場しています(UEFA 2026年2月)。女子代表は、プレーオフでアイルランドに勝ち、EURO2025で初めて主要大会に出場しました(Wales.com 2024年12月18日)。
2026年のワールドカップには出場していません。欧州予選のグループで2位となりプレーオフに進みましたが(UEFA 2025年11月18日)、2026年3月26日、カーディフ・シティ・スタジアムでの準決勝でボスニア・ヘルツェゴビナと1対1で引き分け、PK戦2対4で敗れました(FAW 2026年3月26日、UEFA 2026年3月26日)。FIFAが発表した本大会の出場48チームにも、ウェールズは入っていません(FIFA「Qualified teams for the FIFA World Cup 2026」)。
国内リーグの仕組み(男子・2026-27シーズン)
| 階層 | 名称 | チーム数 | 昇格 | 降格 | 運営 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1部 | ノヴィラ・カムリ・プレミア(Novira Cymru Premier) | 16 | (最上位) | 15・16位が自動降格。14位は入れ替え戦へ | FAW(全国) |
| 2部 | ノヴィラ・カムリ・ノース(North)/カムリ・サウス(South) | 16×2リーグ | 各リーグの優勝が昇格。2位どうしのプレーオフ勝者が1部14位と入れ替え戦(Tier 1ライセンスが条件) | 2026-27の数は未確認(下の注を参照) | FAW(全国) |
| 3部 | アルダル・リーグ(Ardal Leagues):北東・北西・南東・南西 | 16×4リーグ | 2部への昇格(Tier 2ライセンスが条件)。2025-26は各リーグの優勝と、2位どうしのプレーオフ勝者 | 2025-26は各リーグの下位2チーム | FAW(地域ごとのリーグ) |
| 4部以下 | 地域協会のリーグ | 地域ごとに異なる | 地域ごとの規程による。2025-26は6つの地域協会から2チームずつ3部へ | 地域ごとの規程による | 6つの地域協会(Area Associations) |
出典:FAW 男子ピラミッド規程 2025/26 第1〜3条・付録1〜2、FAW 2024年9月27日、FAW 2025年7月15日、FAW 2026年6月1日
※2部と3部の間の2026-27の昇格・降格の数は、FAWの発表を確認できていません。規程は、移行期の2025-26を除き「昇格する数と降格する数を同じにする。ただし1〜3部の各リーグが16チームから外れる場合は、上の階層からの降格数を減らす」と定めています(規程 第3条(g))。
※名称の「ノヴィラ(Novira)」は、2026年6月30日に発表されたタイトルパートナー(スポンサー)の名前です。2025-26シーズンまでは「JD Cymru Premier」などと呼ばれていました(FAW 2026年6月30日)。
1部:30節のあと、3つのグループに分かれる
2026-27シーズンのカムリ・プレミアは、16クラブがホーム&アウェーで2回ずつ対戦し、30節を戦います。そのあと順位で3つのグループに分かれ、グループの中でもう1回ずつ対戦します(FAW 2024年9月27日)。
- 1〜6位「チャンピオンシップ・レース」:35節を終えて首位のクラブが優勝。2〜6位は、少なくとも欧州の大会への出場をかけたプレーオフに進む
- 7〜10位「ヨーロピアン・チャレンジャー」:33節を終えて7位のクラブが、欧州プレーオフの最後の枠を得る
- 11〜16位「サバイバル・ゾーン」:35節を終えて15・16位が自動で降格。14位は入れ替え戦へ
1部の14位は、2部のカムリ・ノースの2位とカムリ・サウスの2位が戦ったプレーオフの勝者と、残留をかけて対戦します(同上)。2部から1部へは、ほかに各リーグの優勝クラブが上がります(クルブ・ペルドロイド 2026年10月2日)。規程は、プレーオフの場合を除いて「全国リーグは優勝か2位でないクラブを昇格させない」と定めています(規程 第3条(h))。
FAWは、16クラブへの拡大に合わせて昇格の数を増やしました。2025-26シーズンは、1部の11・12位の2クラブが降格し、2部の2つのリーグから上位3クラブずつ、合わせて6クラブが昇格しました。2部の降格はこの年だけ各リーグ16位の1クラブに減らし、2部の16チームを保ちました(FAW 2025年7月15日)。
昇格には「ライセンス」が必要
1部に上がるにはTier 1、2部に上がるにはTier 2というクラブライセンスが必要です。ライセンスがなければ、順位が昇格圏でも上がれません(規程 第3条(a))。
2026-27シーズンの2部のライセンスには男子65クラブが申請し、57クラブが認められました。審査は、育成と指導者、社会・環境面の持続性、施設、法務、人員と運営、財務の6つの分野で行われます(FAW 2026年5月6日)。2027-28シーズンの1部のライセンスには、1部の16クラブすべてと2部の12クラブが申請しています(FAW 2026年10月2日)。
全国リーグと地域リーグの境目
規程は、1部と2部を「全国レベル(National Level)」、3部のアルダル・リーグを「地域レベル(Regional Level)」と位置づけています。FAWが1〜3部に責任を持ち、4部から下は6つの地域協会が受け持ちます(規程 第1条)。
たとえば北部では、2026-27シーズンの4部以下に、北東ウェールズ・リーグ(3部制・31クラブ)、北ウェールズ・コースト・ウェスト・リーグ(2部制・28クラブ)、北ウェールズ・コースト・イースト・リーグ(2部制・26クラブ)があります(nwsport 2026年6月13日)。南部や中部の4部以下の一覧は、今回は確認していません。
リザーブチームは別のリーグ
1〜3部のリーグに、クラブのリザーブチーム(2軍)は参加できません。リザーブチームは、ピラミッドの外にある専用のリーグでプレーします(規程 第3条(e))。
イングランドのリーグでプレーするクラブ
ウェールズの大きなクラブのいくつかは、国内リーグではなくイングランドのリーグでプレーしています。2026-27シーズンは次の4クラブです。
| クラブ | 街 | 2026-27シーズンのリーグ |
|---|---|---|
| カーディフ・シティ(Cardiff City) | カーディフ(首都・南部) | チャンピオンシップ(イングランド2部) |
| スウォンジー・シティ(Swansea City) | スウォンジー(南部) | チャンピオンシップ |
| レクサム(Wrexham) | レクサム(北部) | チャンピオンシップ |
| ニューポート・カウンティ(Newport County) | ニューポート(南東部) | リーグ2(イングランド4部) |
出典:スウォンジー・シティ公式 2026年6月25日、ニューポート・カウンティ公式 2026年6月25日
2026-27シーズンは、ウェールズの3クラブが同じチャンピオンシップで対戦します。スウォンジーはカーディフと11月28日の週末と3月13日の週末に、レクサムとは9月5日と4月10日に対戦する日程です(スウォンジー・シティ公式 2026年6月25日)。
ウェールズのクラブがイングランドのカップ戦に出る歴史は長く、最初のウェールズのクラブがFAカップに出たのは1876年です。カーディフ・シティは1927年の決勝でアーセナルを1対0で破り、イングランド以外のクラブとしてただ一度、FAカップで優勝しました(イングランドサッカー協会 2014年12月6日)。
見始めるならこのクラブ
ザ・ニュー・セインツ(The New Saints/TNS)
カムリ・プレミアの王者です。2026年3月3日、2位を争っていたコナーズ・キー・ノマズに2対1で勝ち、5年連続・18回目の優勝を決めました。決勝点は後半アディショナルタイムでした(FAW 2026年3月3日)。
このクラブは国境をまたいでいます。ウェールズの村スランサントフライド(Llansantffraid)のクラブと、イングランドの街オズウェストリー(Oswestry)のクラブが2003年に合併してできました。本拠地のパーク・ホールは、イングランドのシュロップシャー州オズウェストリーにあります。合併相手のオズウェストリー・タウンは、1876年のFAW創設に加わったクラブでした(TNS公式「Club Information」)。
2024年には、ウェールズのクラブとして初めてUEFAカンファレンスリーグのリーグフェーズに進みました。2023-24シーズンの国内リーグは、32試合で30勝し、負けなしで優勝しています(FAW「The Year in Review 2024」)。
レクサム(Wrexham)
FAWが生まれた街のクラブで、ウェールズ・カップの最初の優勝クラブです(FAW「Celebrating 150 Years」)。本拠地のレースコース・グラウンドは、上で紹介した世界最古の国際試合会場です。2026-27シーズンはイングランドのチャンピオンシップでプレーしています。
カーディフ・シティとスウォンジー・シティ
南部の2つの大きな街のクラブで、2026-27シーズンは同じチャンピオンシップで2回対戦します。カーディフは1927年にFAカップで優勝しています。
国内リーグの開幕戦から見るなら
2026-27シーズンの開幕節は7月31日の金曜夜で、昇格した4クラブがそろって試合をしました(FAW 2026年7月)。16クラブに増えたことで、6クラブが新しく1部に加わっています。
2026-27シーズンの日程(国内リーグ)
| 時期 | 1部 カムリ・プレミア | 2部 カムリ・ノース/サウス |
|---|---|---|
| 開幕 | 2026年7月31日〜8月2日 | 2026年7月31日〜8月2日 |
| 冬の中断 | 2027年1月8日〜21日 | 記載なし |
| リーグ戦の終わり | 第1段階(30節)3月26日、第2段階 4月23〜25日 | 4月16〜17日 |
| プレーオフ | 欧州プレーオフ 4月27日〜5月8日、昇降格プレーオフ決勝 5月7〜9日 | 昇格プレーオフ 第1戦 4月23〜25日、第2戦 4月30日〜5月2日 |
国内リーグは真夏に開幕し、5月に終わります。1部の上位クラブは、開幕前の7月から欧州の大会の予選を戦います。2026年は、カーナーヴォン・タウン、コナーズ・キー・ノマズ、ペニボントのカンファレンスリーグ予選が7月6日から組まれていました(FAW 2026年7月2日、下の「試合の日程・結果を見るには」を参照)。
女子の1部「ジェネロ・アドラン・プレミア(Genero Adran Premier)」は8チームで、2段階の方式です。2026-27シーズンの第1段階は2026年9月6日に始まり、2027年1月31日まで行われます。2部にあたるのはアドラン・ノースとアドラン・サウスです(FAW 2026年8月3日)。
日本との比較
| 項目 | ウェールズ国内リーグ(2026-27シーズン) | 日本(2026-27シーズン) |
|---|---|---|
| 開催時期 | 7月31日開幕・冬に2週間の中断・4月下旬にリーグ戦終了、5月にプレーオフ | J1は2026年8月7日開幕〜2027年6月6日 ※1 |
| 1部の規模 | 16クラブ。30節のあと3グループに分かれ、上位と下位は35節 | J1は20クラブ・全38節 ※1 |
| 1部から2部へ | 15・16位が自動降格。14位は入れ替え戦 | 下位3クラブが降格 ※1 |
| 2部から1部へ | 2つの2部リーグの優勝が昇格。2位どうしのプレーオフ勝者が1部14位と入れ替え戦 | 上位2クラブが自動昇格。3〜6位のプレーオフ勝者が昇格(入れ替え戦なし)。ライセンス判定で数が変わることがある ※1 |
| 全国と地域の境目 | 1・2部が全国、3部はFAWが運営する4つの地域リーグ、4部から6つの地域協会 | J1・J2・J3・JFLの下に、地域リーグ(9地域)と都道府県リーグ(47)※2 |
| 国外のリーグ | 4クラブがイングランドのリーグでプレー | なし |
※1 Jリーグ「大会概要 J1」
※2 JFA「国内の競技会」
開催時期はよく似ています。どちらも夏に開幕し、冬に中断を入れて、翌年の春から初夏に終わります。
大きく違うのは、国のサッカーの中心にある大きなクラブが、隣の国のリーグに参加していることです。日本のJリーグには、こうした形のクラブはありません。ウェールズの国内リーグは人口約318万人の地域のリーグで、Jリーグとは人口もクラブ数も大きく違うため、規模を単純に比べることはできません。
日本人選手との接点は、2026年10月7日時点で、ウェールズの国内リーグと上の4クラブへの2026-27シーズンの所属を確認できていません。
試合の日程・結果を見るには
- 1部の日程・結果:FAW公式「Cymru Premier Fixtures & Results」
- 1部の順位表:FAW公式「Cymru Premier Table」
- 2部の日程・結果:カムリ・ノース、カムリ・サウス
- 2部の順位表:カムリ・ノース、カムリ・サウス
- 配信:FAWは2026-27シーズン、1部の全試合(276試合とプレーオフ)を有料の配信サービス「Cymru Football TV」で流すと発表しています(FAW 2026年7月2日)。ウェールズ語の放送局S4Cの「Sgorio」も、一部の試合を中継します(FAW 2026年7月31日)
Cymru Football TVを日本から見られるかどうかは、2026年10月7日時点で公式の発表では確認できていません。
よくある質問
Q. ウェールズのサッカーリーグは何部まで?
A. FAWが運営する全国と地域のリーグは3部(アルダル・リーグ)までです。4部から下は6つの地域協会のリーグで、地域によって段数が違います。
Q. ウェールズの1部リーグは何チーム?
A. 2026-27シーズンから16チームです。30節のあと、1〜6位、7〜10位、11〜16位の3つのグループに分かれて、もう1回ずつ対戦します。
Q. カーディフやスウォンジーはなぜイングランドのリーグにいる?
A. この2クラブとレクサム、ニューポート・カウンティは、ウェールズのクラブですがイングランドのリーグに参加しています。2026-27シーズンは、カーディフ、スウォンジー、レクサムがイングランド2部のチャンピオンシップ、ニューポートが4部のリーグ2です。
Q. ウェールズは2026年W杯に出場した?
A. 出場していません。欧州予選のプレーオフ準決勝で、ボスニア・ヘルツェゴビナにPK戦で敗れました。
Q. ウェールズの国内リーグで一番強いクラブは?
A. ザ・ニュー・セインツ(TNS)です。2025-26シーズンまで5年連続、通算18回優勝しています。本拠地はイングランド側の街オズウェストリーにあります。
調査基準日:2026年10月7日(リーグ制度・日程は2026-27シーズン)
