イラクの1部リーグ「イラク・スターズリーグ(Iraq Stars League/دوري نجوم العراق)」は、2026-27シーズンを2026年8月14日に開幕しました。20クラブがホーム&アウェーで2回ずつ対戦する全38節で、試合は毎週金曜日と土曜日に行われます(ysscores 2026年8月4日)。
今シーズンは降格が多い年です。イラクサッカー協会(IFA)は、17位から20位までの4クラブを2部へ降格させ、2部からは上位2クラブだけを昇格させると発表しました(Baghdad Today 2026年6月16日)。2027-28シーズンから1部を18クラブに減らすための変更です。
代表チームは2026年3月、大陸間プレーオフでボリビアを破り、1986年以来40年ぶりにW杯に出場しました。日本のファンにとっては、1993年の「ドーハの悲劇」の対戦相手として知られる国でもあります。
この記事では、次のことがわかります。
- イラクのリーグは何部まであり、2026-27シーズンに昇格・降格がどう変わったか
- 空軍、警察、港、大学など、クラブの起源がどこにあるか
- 40年ぶりのW杯と、日本代表との対戦の歴史
- 日本のリーグと何が違うか、試合の情報はどこで追えるか
※対象は男子のシニアのリーグで、2026-27シーズンの発表にもとづきます。女子のリーグは扱いません(2026年10月16日確認)。イラクサッカー協会とリーグの公式サイトの規程文書は本文を確認できなかったため、リーグ制度は協会の発表を伝える報道の本文で確認しています。
イラクという国と日本
イラクは中東、ペルシャ湾の奥に位置する共和制の国です。首都はバグダッドで、面積は約43.74万平方キロメートル(日本の約1.2倍)。公用語はアラビア語とクルド語の2つで、宗教はイスラム教(スンニ派・シーア派)が中心、キリスト教徒もいます(JICA「イラクの概要」)。
北部には、クルド語を話す人が多く住む地域があります。1部リーグにも、この地域の街アルビル(エルビル)、ドホーク、ザーホー、スレイマニヤのクラブが参加しています。2026-27シーズンの開幕戦も、スレイマニヤのネウロズ・スタジアムで行われました(ysscores 2026年8月4日)。
日本とイラクの経済協力で大きなものの一つが、南部の港湾都市バスラの製油所です。日本は円借款でこの製油所の改良を支援し、2025年10月25日に竣工式が行われました。円借款の総額は約5,703億円で、JICAは中東・北アフリカ地域で最大の規模だと説明しています(JICA 2025年10月29日)。
イラクのサッカーは、どう歩んできたか
全国リーグの始まりと、空軍のクラブ
記録サイトRSSSFによると、クラブが参加する全国リーグは1974-75シーズンに始まりました。最初の王者は、空軍のクラブ「アル・タヤラン」でした(RSSSF「Iraq 1974/75」)。このクラブが、現在のアル・クワ・アル・ジャウィヤ(アラビア語で「空軍」)です。
アル・クワ・アル・ジャウィヤは、2025-26シーズンのリーグ王者です。最終節の2026年6月2日、バグダッドのアル・マディーナ国際スタジアムでザーホーに3-2で勝ち、勝ち点89で優勝を決めました(alkhaleej 2026年6月2日)。
クラブの名前に残る「起源」
イラクの主要クラブには、軍、警察、港、大学など、組織の名前をそのまま持つものが多くあります。RSSSFのクラブ設立年の一覧(2007年更新)では、次のように整理されています(RSSSF「Iraq – Foundation Dates of Clubs」)。
| クラブ | 名前の意味 | 本拠地 | RSSSFの記録 |
|---|---|---|---|
| アル・クワ・アル・ジャウィヤ(Al-Quwa Al-Jawiya) | 空軍 | バグダッド | 1931年設立 |
| アル・ミーナー(Al-Mina’a) | 港 | バスラ | 1931年設立 |
| アル・ザウラー(Al-Zawraa) | (旧名は「運輸」) | バグダッド | 1969年設立(1972年までは「アル・ムワサラト(運輸)」) |
| アル・タラバ(Al-Talaba) | 学生 | バグダッド | 1969年設立(1977年までは「アル・ジャーミア(大学)」) |
| アル・シュルタ(Al-Shorta) | 警察 | バグダッド | 設立年は資料により異なる(下の注) |
注:アル・シュルタの設立年は、RSSSFの一覧と他の資料で食い違いがあるため、この記事では書きません。
代表の転換点:1986年W杯と2007年アジア王者
イラク代表が初めてW杯に出場したのは1986年のメキシコ大会です。2026年大会は、それ以来40年ぶりの出場になりました(The Peninsula(AFP配信)2026年4月1日)。
2007年にはアジアカップで初めて優勝しました。ジャカルタのブン・カルノ・スタジアムでの決勝でサウジアラビアに1-0で勝ち、72分に決勝点を決めたユーニス・マフムードが大会最優秀選手に選ばれています(AFC 2021年10月28日)。そのユーニス・マフムードは、2026年5月にイラクサッカー協会の会長に選ばれました(FIFA 2026年9月10日)。
国内で開く国際大会:バスラのガルフカップ
2023年1月には、バスラで第25回アラビアン・ガルフカップ(湾岸諸国の代表による大会)が開かれました。1月19日の決勝でイラクはオマーンに延長の末3-2で勝ち、4回目の優勝を果たしています(QNA 2023年1月19日)。
クラブの国際大会でも、イラクのクラブは結果を残しています。湾岸諸国のクラブ大会「ガルフ・クラブ・チャンピオンズリーグ」は、2024-25年大会からイラクとイエメンのクラブが加わりました。その最初の大会で、北部のドホークが2025年4月15日、ホームのドホーク国際スタジアムでの決勝でクウェートのカディシアに2-1で勝ち、優勝しています(Rudaw 2025年4月15日)。アル・クワ・アル・ジャウィヤは、AFCがかつて開いていたAFCカップの「3度の王者」としてAFCに紹介されています(AFC「The AFC Cup Final 2016-2018」)。
リーグの仕組み(男子・2026-27シーズン)
| 階層 | 名称 | チーム数 | 昇格 | 降格 | 運営 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1部 | イラク・スターズリーグ(Iraq Stars League/دوري نجوم العراق) | 20 | (最上位) | 17〜20位の4クラブが自動降格(入れ替え戦なし) | イラクサッカー協会(IFA)の競技委員会 |
| 2部 | プレミアディビジョン(الدوري الممتاز) | 20(協会の規約の定め。下の注) | 1・2位が自動昇格(プレーオフなし) | 公式資料で未確認 | IFA |
| 3部 | ファースト・ディビジョン(دوري الدرجة الأولى) | 公式資料で未確認 | 公式資料で未確認 | 公式資料で未確認 | IFA |
| 4部 | セカンド・ディビジョン(دوري الدرجة الثانية) | 20(10チーム×2グループ。2025-26シーズン) | 各グループ1位と、2位どうしの対戦の勝者(計3チーム。2025-26シーズン) | 公式資料で未確認 | IFAの競技委員会 |
| 5部 | サード・ディビジョン(دوري الدرجة الثالثة) | 公式資料で未確認 | 公式資料で未確認 | (最下層) | 公式資料で未確認 |
出典:1部・2部の昇格・降格は Baghdad Today 2026年6月16日(IFAの発表を引用)。1部のチーム数と方式は ysscores 2026年8月1日、ysscores 2026年8月4日。4部は Shafaq News 2025年11月5日。
※2部のチーム数:IFAの第一副会長によると、協会の規約(第26条a)は1部20クラブ・2部20クラブと定めています。2027-28シーズンからは1部18・2部22の計40クラブにする案です(Baghdad Today 2026年6月8日)。2026-27シーズンの2部の参加クラブの一覧は、2026年10月16日時点で協会の発表を確認できていません。3部と5部も、チーム数や昇格の数を協会の資料で確認できていないため、表では「未確認」としています。協会の公式サイトの競技の項目には、4部のセカンド・ディビジョンまでが載っています(IFA 公式サイト)。
2026-27シーズン:4クラブ降格で、翌季から18クラブへ
2025-26シーズンまでの1部は、20クラブのうち下位2クラブが自動降格し、もう1クラブが2部との入れ替え戦に回る形でした。2025-26シーズンは、ナジャフとアル・カーシムが自動で降格し、入れ替え戦ではアマナト・バグダッドが2部のカルバラーに2試合とも0-1で敗れて降格しました(ysscores 2026年6月13日)。
2026-27シーズンは、この入れ替え戦がなくなります。IFAは2026年6月16日、1部の17〜20位の4クラブを2部へ降格させ、2部の1位と2位を1部へ昇格させると発表しました(Baghdad Today 2026年6月16日)。
理由について、IFAのサルマド・アブドゥルイラー第一副会長はイラク国営通信(INA)に対し、2027-28シーズンから1部を18クラブにするためだと説明しています。協会の規約は1部・2部とも20クラブと定めているため、この案はFIFAに説明して進めている段階で、1部18・2部22として、合わせて40クラブの数は保つとしています(Baghdad Today 2026年6月8日)。
2026-27シーズンの昇格組
2025-26シーズンの2部からは、3クラブが1部に上がりました。
- アル・ジャウラーン:2部で優勝し、クラブとして初めての昇格(alkhaleej 2026年5月22日)
- ガーズ・アル・シャマール:2部2位で昇格(alkhaleej 2026年5月25日)
- カルバラー:入れ替え戦でアマナト・バグダッドに勝って1部に復帰(ysscores 2026年6月13日)
外国人選手の枠
2026-27シーズンは、1クラブが登録できる外国人選手は最大7人、1試合で同時に出場できるのは最大5人と報じられています(ysscores 2026年8月1日)。
カップ戦
国内カップ(イラクFAカップ)の2025-26年大会は、W杯2026に向けた代表の日程などを理由に途中で打ち切られ、優勝クラブは決まりませんでした(alkhaleej 2026年5月28日)。
2026-27シーズンの日程
- 日程の抽選会:2026年8月7日、バグダッド(alkhaleej 2026年7月30日)
- 開幕:2026年8月14日。前季王者アル・クワ・アル・ジャウィヤが、スレイマニヤでネウロズと対戦(ysscores 2026年8月4日)
- 方式:20クラブ・全38節。試合は毎週金曜日と土曜日(ysscores 2026年8月1日、alkhaleej 2026年7月30日)
最終節の日付は、2026年10月16日時点で公式の発表を確認できていません。
代表:40年ぶりのW杯(2026年)
イラクは、アジア予選から大陸間プレーオフに回って出場権を争いました。大陸間プレーオフの決勝は2026年3月31日、メキシコのモンテレイ近郊で行われ、イラクがボリビアに2-1で勝ちました(FIFA 2026年4月1日、The Peninsula(AFP配信)2026年4月1日)。この勝利で、イラクは48番目、最後の出場国になりました(FIFA「Qualified teams for the FIFA World Cup 2026」)。
本大会ではフランス、ノルウェー、セネガルと同じグループIに入り、3試合とも敗れてグループステージで敗退しました。最終戦はセネガルに0-5でした(FIFA「World Cup 2026: Qualified and eliminated teams」2026年6月27日)。
日本代表との対戦
日本とイラクの試合で最もよく知られているのは、1993年10月28日、カタールのドーハで行われたW杯アメリカ大会アジア最終予選です。日本は2-1でリードしていましたが、試合終了間際にイラクに同点ゴールを決められて2-2で引き分け、W杯初出場を逃しました(JFA「FIFAワールドカップの歴史」)。日本では「ドーハの悲劇」と呼ばれています。
最近では、2024年1月19日のアジアカップ2023(カタール)グループステージで対戦し、イラクが2-1で勝っています。イラクの2点はどちらもアイメン・フセインが決めました(JFA 2024年1月19日)。
イラクのクラブに所属する日本人選手については、2026年10月16日時点で公式の資料で確認できていません。
日本との比較
| 項目 | イラク(2026-27シーズン) | 日本(2026-27シーズン) |
|---|---|---|
| 開催時期 | 2026年8月14日開幕。最終節は未発表 | J1は2026年8月7日開幕・2027年6月6日閉幕 ※1 |
| 1部の規模 | 20クラブ・全38節 | J1は20クラブ・全38節 ※1 |
| 1部から2部へ | 17〜20位の4クラブが自動降格(2026-27シーズンだけの措置。翌季から18クラブの予定) | 下位3クラブが降格 ※1 |
| 2部から1部へ | 1・2位が自動昇格。プレーオフなし | 上位2クラブが自動昇格。3〜6位のプレーオフ勝者が昇格。ライセンス判定で数が変わることがある ※1 |
| 試合の曜日 | 毎週金曜日と土曜日 | 公式の日程による |
| 外国人選手 | 登録7人・出場5人まで(報道) | (この記事では比較しない) |
| 下部リーグ | 2部〜4部はIFAのリーグ。3部以下の詳細は未確認 | J1・J2・J3・JFLの下に、地域リーグ(9地域)と都道府県リーグ(47)※2 |
※1 Jリーグ「大会概要 J1」
※2 JFA「国内の競技会」
2026-27シーズンは、日本とイラクの1部がよく似た形になりました。どちらも20クラブ・全38節で、開幕は1週間ちがいの8月です。違いは昇格と降格にあります。日本はプレーオフで最後の昇格枠を決めますが、イラクは今シーズン、入れ替え戦をなくして4クラブを一度に入れ替えます。リーグの規模を変える途中の年だからです。
試合の日程・結果を見るには
- リーグ公式サイト:Iraq Stars League(2026年10月16日、こちらの環境からは表示できませんでした)
- イラクサッカー協会:IFA 公式サイト(アラビア語。協会のSNSへのリンクがあります)
イラクサッカー協会は2026年9月29日、映像分析サービスのHudlと契約し、スターズリーグや代表のホーム戦などの試合映像をHudlのデータベースに載せると発表しました(Hudl 2026年9月29日)。これはクラブや指導者向けの分析サービスで、一般向けの中継ではありません。日本から試合を生中継で見る方法と、リーグ公式の動画チャンネルは、2026年10月16日時点で確認できていません。
よくある質問
Q. イラクのサッカーリーグは何部まで?
A. 1部のスターズリーグから4部のセカンド・ディビジョンまでは、協会の発表を伝える報道で確認できました。その下に5部のサード・ディビジョンがあるとされますが、3部から下のチーム数や昇格の数は、協会の資料で確認できていません。2026-27シーズンの1部は20クラブです。
Q. イラクのリーグはいつ行われている?
A. 2026-27シーズンは2026年8月14日に開幕しました。全38節で、試合は毎週金曜日と土曜日に行われます。
Q. 2026-27シーズンは何クラブが降格する?
A. 1部の17〜20位の4クラブが2部へ降格します。入れ替え戦はありません。2027-28シーズンから1部を18クラブに減らす計画のためです。
Q. イラクは2026年W杯に出場した?
A. 出場しました。大陸間プレーオフでボリビアに2-1で勝ち、1986年以来40年ぶりの出場です。本大会ではグループIで3連敗し、グループステージで敗退しました。
Q. 「ドーハの悲劇」の相手はイラク?
A. そうです。1993年10月28日のW杯アジア最終予選で、日本は試合終了間際にイラクに同点にされて2-2で引き分け、W杯初出場を逃しました。
調査基準日:2026年10月16日(リーグ制度・日程は2026-27シーズン)

