2017年、楽天はFCバルセロナのメインスポンサー契約を結んです。
契約金額は4年で2.2億ユーロ(約290億円)、年間あたり約75億円。当時の日本企業のスポーツスポンサー契約として、史上最大規模でした。
なぜ楽天はバルセロナに75億円を払ったのか。そして、その投資はリターンを生んだのか。
楽天の狙い
狙い1:海外認知度の急激な向上
楽天は2010年代後半、海外展開(楽天モバイル、楽天TV、海外EC)を本格化させていた。海外市場での認知度を一気に上げる必要があった。
バルセロナのSNSフォロワー数は当時すでに3億人超。1試合の世界視聴者数は数千万人。これに楽天ロゴを4年間掲出することの広告価値は、計算上年間100億円を超えると試算された。
狙い2:「楽天=グローバル企業」のブランディング
メッシ・スアレス・ネイマール(当時)が着るユニフォームに楽天ロゴ。これは「楽天は世界的企業」というブランディングの一撃。
国内で「楽天市場の会社」と思われている認知を、「世界のスポーツに投資する企業」に塗り替える効果があった。
狙い3:ヴィッセル神戸との連動
楽天はヴィッセル神戸のオーナーでもあります。「神戸×バルセロナ」のコラボイベント、選手交流、ユース生のバルセロナ留学などのシナジーを設計できた。
イニエスタの神戸加入(2018年)も、この連動の象徴です。
投資の効果
効果1:楽天モバイルの参入認知
2019年に楽天モバイルが日本で参入する際、「楽天=世界クラスのスポーツに投資する大企業」という認知が、信頼性向上に貢献した。
効果2:英語圏でのブランド認知
英語圏のメディアが「Rakuten」を頻繁に取り上げるように。グローバル人材採用にも有利になった。
効果3:イニエスタ獲得・WEリーグ進出
バルセロナとの関係が、ヴィッセル神戸の世界的選手獲得・女子チーム強化につながった。
契約終了と評価
2022年に契約終了。バルセロナの財政危機もあり、楽天は延長しなかった。
評価は分かれる。
ポジティブ評価:
– グローバル認知の獲得
– 楽天モバイルの参入を後押し
– ヴィッセル神戸との連動
ネガティブ評価:
– 直接的な売上増は限定的
– バルセロナの財政危機で印象が損なわれた
– ROIの計測が難しい
中小企業への示唆
楽天バルセロナの事例は、「ブランディング投資のROI評価」の難しさを示しています。
中小企業がスポンサー投資をする際の判断軸は3つ。
1. 認知度向上の目標KPIを明確化
「ブランド認知を上げる」では曖昧。「アンケート調査での認知率を10%→30%に」など、具体的KPIを設定します。
2. 既存事業とのシナジーを設計
スポンサー投資単体ではなく、既存事業との接点を10個以上書き出してから判断します。
3. 終了時の損切りルール
「3年後に成果が出なければ終了」を最初から決めておく。意地で延長する罠を避ける。
楽天は契約終了の判断ができた。これは経営判断として、むしろ評価されるべき点です。
参考リンク
– 楽天×ヴィッセル神戸シナジー(ストライカードットコム)
– バルセロナの財政危機(ストライカードットコム)
